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-   2012.04.01 Sunday     -   -
MOLE vol.08 配布場所
 ■東京

Only Free Paper
渋谷区宇田川町15−1 SHIBUYA PARCO part1 6F


at.Cafe

Ommbla  
世田谷区弦巻2−8−17

LUVCA musashikoyama
目黒区目黒本町4−2−6

Junction City
中野区上高田3−37−7サクラディアI B1F


at.Bar

CAVE-BE
世田谷区下北沢2−14−16北沢プラザB1F

 
at.Shop
 
Gover
世田谷区若林2−31−12 1F
 
note works
世田谷区若林2−31−12 1F
 

at.Salon
 
iico
世田谷区北沢2−26−8コニーGRビル2F

OPSIS
渋谷区恵比寿1−22−23 1F

captif
世田谷区用賀4−3−16 1F

cLeF
渋谷区恵比寿南11−4−9 1F

KOKORO
渋谷区神宮前4−25−35 B1F
 
sulir
渋谷区恵比寿西1−10−7MMSビル5F

Bug
渋谷区東3−15−9桑原ビル2F


at.Studio

STUDIO FAMILIA
世田谷区太子堂3−26−9


■宮城

at.Cafe

MEALS
仙台市青葉区片平1丁目1−11


■秋田

at.Bar

Bar JAH
秋田市大町5−3−16 1BOXビル


at.Shop

STAR SMILE
秋田市手形からみでん3−74

ストレージストア
秋田市千秋久保田4−2 秋田フォーラス5F


at.Salon

STREET
秋田市千秋公園1−28
018−831−7807

Hair Make POWER
秋田市新藤田字大所38−25


■宮崎

at.Shop

double
宮崎市阿波岐原町前浜4276−376

GNARLY
宮崎市橘通東3丁目7−15





MOLE配布場所   2011.11.03 Thursday   20:42   -   trackbacks(0)
パチもん
 煙がもうもうと焚かれている露店の中にパチもんのTシャツが沢山売っている。

今日のお目当ては某バンドのTシャツであるのだが、実物は高いのでパチもんを探しにここまで来たのだ。

ちなみにパチもんは1000円程度で売っている。本物は4000円程度だ。

この3000円の浮きがあれば、間違いなく数日間飯が食える。きっと大好きな焼き鳥も何個か食えるのだ。

私は貧乏だ。普段はおしぼり工場でおしぼりを固くしぼる仕事をしている。最初はなかなか固くしぼれなかったため、よく先輩に怒られたものだけれど、最近はギュっとしぼる事が出来るようになったので、後輩によくそんなに固くしぼれますね。固い決意の現れのように感じますよ。などと持て囃されている日々である。

そんな私を気に入らない同僚がいるため、バンドTシャツで一つ上のオシャレをして威嚇してやるのだ。

そのために今日は露店にやってきた。
香が焚かれており、物を沢山煮ているため、煙に包まれている。まやかしのようだ。

お目当てのTシャツ屋の前に近寄ると、今まさにTシャツを煮込んでいる最中であった。

「もう少しで煮あがるから待っててね」

露店のおじさんはそう言うと、木の棒で大きな壺のような鍋の中をかき回す。

炎天下の中ぐつぐつと煮え立つ鍋の音を聞いていると、頭がクラクラしてくる。

私は隣の店で、シーセボンというジュースを買い、ごくごくと飲み干すと、そちらの店主にいい飲みっぷりなのでこれもあげると言われて、サワガニを一匹プレゼントされたため、バリバリと食ってみせた。あまり美味しくない。

そうこうしているうちにTシャツが煮え立ったようで、ほらよ! と鍋からそのまま木の棒で取り出したものを投げつけられた。

ビターンと顔に染まりたてのTシャツが叩きつけられ、あつっ! と叫んでいると、周りの人々がワハハと笑っていた。

そして1000円を払い露店をくるくる回ると段々疲れてきたため、家に帰る事にした。

びたびたのTシャツを窓の外に干し、家で紅茶を飲み一服をしていると電話の音がじりじりと鳴った。

「はは。パチもん、か。煮ている所から見ていたよ。」私を憎む同僚からの電話であった。

「見ているとは…ストーカーか!」私は語気を荒げた。

それがなんだと言わんばかりに彼は続ける。

「私のは本物だよ。」

「なにっ!!」

「お前のようなパチもんではないということだ! では!」

受話器を耳から少し離しても聞こえるガチャリという音と共にプープーとむなしく響いている。

なんという事だ。パチもんでは本物に勝てないではないか。

悔しいのでやけ紅茶を煽ってそのまま眠った。

次の日会社に一応着て行くと、彼がやってきた。Tシャツを着てさも勝ち誇った顔をして近寄ってくる。くそう…今日の所は…などと思っていると、何かの違和に気づいた。

「お前、それ…」

「なんだい。これこそが本物だよ。」

「そのバンドのトレードマークはフナじゃないか。でもお前のそれはブナシメジじゃないか。それパチもんではないか?」

「なっ…なにぃ! これがブナシメジのはず…あっ! これはブナシメジだ! フナではなかった! ちくしょう! 友人に3000円で譲ってもらったのに、これはブナシメジじゃないか!」

彼は壁に両手をダーンと打ち付けると、おもむろに泣き出し、語りだした。

「昔から何をやってもお前に勝てないんだ…おしぼりも握力足らずのため若干固くしぼれない…クルミを握って修行をしても、くるみを割る事も出来ない。露店でお前を見かけて、パチもんを買う所を見て、これで勝てる! と思ったのに…」

ブナシメジに涙の玉が落ち、ブナシメジの色合いが深みを増した。

「そんな事ないよ。私だって君には勝てない所があるんだ。その哀愁だよ。ロマンスグレーのごとくの哀愁が私からは出せないんだ。いつも憧れていたよ。」

「お、お前…」

二人で泣きながら抱き合っていると本物のフナのバンドTを来た先輩がやってきて、「なんそれ」と言って去っていった。

おわり








実家のシャンプーがダウアーだった   2011.11.01 Tuesday   01:33   -   trackbacks(0)
MOLE 08 配布です!今回の表紙!





大変長らくお待たせ致しました。

前回の発行から約半年の月日を経て、ついにMOLE Vol.08が完成しました。
早いところでは本日11月1日から配布が開始されますが
順次、今週末くらいまでに各協力店様において配布されます。


今回の表紙は達磨です。
目印は赤い達磨。

ちなみに前回同様、今回も表紙を切り取って工作できます。
↓こんな感じで


右下のモノクロの表紙は、達磨さんを切り離した後に出てくる第2の表紙です。





前回のVol.07の表紙と↓




ぜひぜひ、みなさんの願いを込めて達磨を飾ってあげて下さい。
願いが成就した暁には、思いっきりPOPに目を書き込んであげてくださいね。


近日中に配布先一覧を更新します。

なお、ちょっとしたお知らせ等々ありますのでそちらも
告知出来るようになったらさせて頂きます。


どこかで見かけたらぜひ連れて帰ってあげてくださいませ・・・


tamura

MOLE News   2011.11.01 Tuesday   01:15   -   trackbacks(0)
ちょっとした告知です
 ちょっとした告知させてもらいます。

世の中には色んなハンデを背負った方々がいっぱいいて
それぞれに一生懸命、がんばってくいしばって生きてます。

学生時代の友人がそんな人たちを支える為に頑張っています。
少しでも力になれたらなぁって思います。
よろしくお願いします。







*【J-Workout Founder渡辺淳追悼コンサート開催趣 旨】** 
 *脊髄損傷回復スペシャリストで日本唯一の脊髄損傷回復施設J-Workoutを創設 
した渡辺淳さんは、ご承知の通り昨年29歳という若さでこの世を去りました。 

 彼の生き方は多くの方に笑顔と勇気、希望を与えました。そしてそんな彼の生 
き方に感銘を受けたピアニストTEMPEIさんが彼の訃報を聞きつけ私のもとへ訪れ 
ました。TEMPEIさんは『自分にできることは音楽を作ることしかできない、だか 
ら渡辺淳さんに捧げる曲を作らせてください。』とおっしゃり『Miracle is in 
the method』という曲を作曲してください ました。 

 淳さんを表現するかのような易しいメロディーのこの曲を、淳さんを愛し、生 
前淳さんを支えてくださった一人でも多くの方に聞いていただきたくこのコン 
サートを開催させていただく運びとなりました。 

 生前私は彼といつか普通の人が『あっ車いすの人が来てる』と特別視するので 
はなく、多くの車イスの人たちが自然に混ざり合う大きなイベントができたらイ 
イネとよく語り合ってきました。最初は意識するかもしれないが、続けていけば 
徐々に当たり前になっていくそんな社会の一歩になるよね と・・・ 

 そんな2人の夢を奇しくも彼の追悼コンサートという形で実現することになっ 
てしまいまし た。 TEMPEIさんのファンを始め会場にはこれまで車イスとは無 
縁だった方も多数いらっしゃいます。私はこの方々に大勢の車イスの方々と自然 
に混ざり合う機会を提供できることをうれしく思いま す。 

 当日はTEMPEIさんが『Miracle is in the method』に詩を加えシンガー梶原ひ 
ろみさんに歌っていただくことになりました。 

 また、渡辺淳と幼馴染であるINNER THOUGHTSというHIP-HOPユニットが、脊髄 
損傷という過酷な障害と戦う人達へ限界はないということを音楽で伝えてほしい 
という彼の熱い思いを受け書き下ろし た『KNOW NO LIMIT』という曲を歌ってい 
ただきます。 

 スタッフ一同、参加していただいた方に『来てよかった』と絶対に思っていた 
だけるコンサートにいたします。是非皆様のご参加をお待ち申し上げております。 

 なおコンサートの収益は淳さんならどうしたであろうと考え、東日本大震災で 
被災された脊髄損傷者の支援に活用させていただきます。 

 長文でしたがお付き合いくださいましてありがとうございます。 

                  社団法人 国際脊髄損傷リハビリテー 
ション協会 
                            理事長 伊佐 拓哲 

♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪ 

*”KNOW NO LIMIT”CHARITY CONCERT 2011* 

会   場:国際交流館 国際会議場 @お台場 
日  時:2011年6月25日(土)14:00〜  (開場13:00) 
チケット:3,000円(大人)  
  2,000円(12歳以下) 
  5,000円(3,000円のチケットと変わりはありま せんが、チャリティにご協力 
いただける 方) 
チケット購入:http://bit.ly/fZdhU0 
お問い合わせ先:国際せきずい損傷リハビリテーション協会  
          Info@re-sci.or.jp <mailto:Info@re-sci.or.jp> 
          03-5560-9903(火曜〜土曜 10:00〜17:00) 
♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪








MOLE News   2011.06.16 Thursday   22:48   -   trackbacks(0)
順次、配布開始!MOLE.07渾身の出来です!
お久しぶりです。
みなさまお元気だったでしょうか?

配布を延期していたMOLE Magazineの最新号ですが、ゴールデンウィークから順次配布を開始しております。


今回から配布先に Only Free Paper さんが加わりました。

雑誌やテレビなどでも紹介されているフリーペーパー専門店です。
もちろん、置いてある商品はフリーペーパーなのですべてタダ!
渋谷はキャットストリートにある大人気のお店です。
全国各地から届く様々なフリーペーパーやマガジンが一気に手に入れられます。

そんなフリーペーパー界の「The伊勢丹」とも言えるOnly Free Paperさんに
なんと!我がMOLE Magazine怒濤の120冊を置いて頂ける事になりました。

こんなに大量に置いて頂けるのは初めてなので、すごくすごく嬉しいです!

ありがたいです。本当にありがたいです!

次の週末には追加で納品した100冊が入荷しているハズなので
渋谷にお出掛けした際には是非お買い物のついでにお立ち寄り下さい。

MOLE Magazineだけでなく、素晴らしい冊子もたくさん置いてありますので
そちらも手に取ってお家に連れて帰ってあげて下さいませ。


vol.07の配布店舗のご案内が遅れていますが今月中にはアナウンスさせて頂きます。
引き続き遠方からのご注文にもお応えしますので、入手困難な方は下記までご連絡下さい。
info☆ug-mole.com(☆→@)


それから重大なお知らせということで。

予定では6月に発行するはずでしたMOLE Magazine Vol.08ですが
震災の影響などもあり、本を作るための紙を今までの価格で手に入れる事が難しく
9月発行へ延期させて頂くことになりました。

Vol.07の配布開始から4ヶ月ほど間が空いてしまい悔しい限りなのですが
そのぶん良いものをお届け出来る様に頑張りますのでよろしくお願いいたします!







ではでは、この表紙を目印に…
どこかで見つけたら持って帰ってやってください。








tamura
MOLE News   2011.05.10 Tuesday   20:39   -   trackbacks(0)
「台所のアケミ」
 「うぐぁ…」

アケミに包丁が刺さっている。目の前にあるトマトをスパッと切ろうとしたらイージーミスで自分を切ってしまったのだ。

このご時世に切腹なんて片腹痛い。いや。刺した腹の真ん中が痛い。今私うまい事考えたわ!とニヤけるが、激痛で顔がゆがんでしまう。

とりあえず救急車を呼び、一命を取りとめ、数週間後無事に退院した。

アケミは36歳の学生である。要するに大仁田みたいなものである。久しぶりに登校すると、アケミの友達の陣子が傍へかけよってきた。

「アケミさん刺されたらしいですね。男女関係のもつれですか? アケミさん位の年になるとそういうのあるんですね。こえー」

といってガタガタ震えている。

「違うのよ陣子さん。ウッカリなの。私はウッカリさんなの。」とあわててフォローすると

「アケミさん記念に帰りプリクラとりましょうよ」と言ってどこかに行ってしまった。



アケミはこの年で学校に入るだけはあり、真面目に勉強したいので、授業中はしっかり話を聞いてノートを取っている。今日もカリカリと鉛筆と色ペンで綺麗にノートを書いていた。

授業が終わって一息ついていると、机の上に揚げ物がトンと置かれた。エビフライほか各種だ。

「!?」

アケミは驚いて顔を上げると、山林くんだった。

山林くんは多分22歳位の学生で、アケミが密かに素敵な好青年と思っていた人だった。

「揚げ物をあげるのでノートを見せてくれませんか?」

アケミは照れてダッシュで逃げた。すると山林くんが揚げ物を両手で持ってダッシュで追いかけてきた。

「アケミさん! 一口食べれば納得しますから!」

アケミは走った。すると陸上部の山林はもっと走った。そして回り込まれてしまった。

「ぜぇ、ぜぇ、アケミさん、疲れた時には揚げ物です」

アケミは山林の心遣いにまた少しキュンとしたので観念し、揚げ物を頂く事にした。

「廊下じゃ何ですから、音楽室にでも行きましょう。バッハの肖像画も見たいし」と山林が言い、アケミの手を引いた。片手に器用に揚げ物の皿を持つ。アケミはドキっとし、何も言わずについていった。

誰もいない音楽室に入ると、向かい合わせに机に座った。「さあ、食べて下さい。」と山林はポケットから箸と塩のビンを出した。

「塩で食べるのね。」アケミは天つゆ派なので少しだけ残念な気持ちになった。

「塩で食べて欲しいんです。」真剣な山林の目がアケミを貫く。

アケミは塩で頂く事にした。

「頂きます。」アケミは手を合わせ少し塩を振ると、箸で海老フライをヒョイと持ち上げ
、顔の前まで持ってきた。

「サクッ」

静かな音楽室を歯切れのいい天ぷら音が切り裂いた。

「こ、これは…」

山林が興奮したような、緊張したような面持ちでアケミを見ている。

アケミはグランドピアノに向かって走った。
「ガアァァン」音楽室には明美のかき鳴らすピアノの音が響き渡った。

「アケミさん!?」山林が驚き戸惑うが、アケミの演奏はとまらない。

しばらくするとメロディは優美なものに変わり、アケミが歌いだした。

「サブウェイ 地下鉄の ことよ
あれに 乗るとね 私はね
閉塞感を 味わうの 
だけども 今日はね 違うわ

あらわれたのよ 目の前に
琥珀 色した 天ぷらが
私 最初は 迷ったの
だけどね すべては 変わった

衣 サックリしていてその上ふんわりで
海老は ぷりぷりとってもジューシーよ
私 その時 思ったの
若き 頃の わたし の ようね…


涙 無くして 頂けぬ
淡き あの日の きらめきよ

あふれる 想いを 今ここで

貴方に 伝える 好きよと…」


アケミは思いの丈をぶつけると、倒れた。

気づくとアケミはベッドの上だった。病院に運ばれていたのだ。だが歯医者だった。

山林君が間違えて歯医者につれてきてしまったのだ。明美は虫歯があったのでそのまま治療されてしまった。

明美を治療している先生は、歯の隙間に挟まった天ぷらの衣を見て、これは…と思った。

そして治療が終わると、アケミにそっと耳打ちした。

「お代はいらぬからあの奇跡の衣の製造方法を教えてくれないかね?」

アケミは戸惑った。

奇跡の衣は山林君が私にくれたもの。製造方法を渡す事は二人の秘密の共有が出来なくなってしまう。というか製造方法は知らない。

「…いえ、それは出来ません。お代はきちんと払いますから」と言い、初診料込みの3000円を支払い、歯医者を後にした。

そういえば山林君がいない。どこへ行ったのだろう…




アケミは七三通りを歩いていた。歯が治って爽快なので喫茶「ぼたんの華」に向かおうとしているのだ。

ぼたんの華で山林くんにお礼の手紙をしたためようと思い、コンビニで便箋セットを買った。

そしてぼたんの華の前に着くと、ドアがひとりでに開いた。

そしてそのままアケミの顔にぶつかり、アケミは鼻血を流した。

ドアの向こうの青年があわてて「申し訳ありません素敵な熟女さん! 大丈夫ですか」とハンケチを差し出した。

戦隊ものの青いハンケチだった。

「良いのよ、青いハンケチが紅く染まってしまうわ、この青空カラオケのようなハンケチを血濡れた午後にはしたくないわ」とアケミは断った。

すると青年は「そうはいきません熟女さん! あ、お名前を…」

「アケミと言うわ」アケミは血を流しながら笑顔で答えた。

「僕はいもへいと言います。芋に平と書きます。大地に根付くよう、父が付けてくれた名前です。」と言う。

ようやく落ち着いてきたアケミは芋平の顔を見た。

ニジマスのようなさわやかな顔であった。

アケミはこのような青年の前でたらたらと血を流す自分がなんだか恥ずかしくなり、逃げた。

すると芋平が追ってきた。

「待ってください! アケミさん! ハンケチを受け取って下さい!」

アケミは逃げながら息を切らして答えた。

「無理よ芋平さん! 戦隊ものはレッドばかりではないのよ!」

芋平も懸命に走りながら言った。「黄色やグリーンの重要さも知っているつもりです! 心にあればそれでいいんだ! ハンケチを使ってよ!」

アケミは引くに引けなくなり、更にダッシュすると、道の角で人にドシンとぶつかってしまった。

「あうつっ! ご、ごめんなさい!」

顔を上げると、山林であった。

「いつぅ…」

山林がいつぅとなっている。アケミはびっくりし、「山林君! 大丈夫!?」と言って顔を近づけると、頭から少し血が出ていた。

「山林君! ハンケチで血を…」アケミはそこまで言うと、自分がハンケチを持っていない事に気が付いた。

芋平が後ろから出てきた。

「このハンケチを使って下さい。」

戦隊物の青いハンケチを差し出した。

「ありがとうございます。このような綺麗なハンケチを使わせていただき感無量です。」

山林は笑顔でそういうとハンケチを使った。

青いハンケチに血が滲んでゆく。

芋平の顔が歪む。


「貴方…山林さん。」

「なんでしょう? えっと…」

「…芋平です。」

「あ、芋平さん。」

「お怪我、早くなおるといいですね。それじゃ僕はこれで…」

芋平は背中を向けて去ろうとした。

「あ、待ってください! 連絡先を教えて下さい。ハンケチをお返しして、お礼をしたいので。」

引き留める山林に対し芋平は魚の目で「それはあげます。アケミさんと仲良く使って下さい」

と言って帰っていった。


アケミはキョトンとして「芋平さん…」と小さな声を吐き出す事しか出来なかった。

その後帰るために山林と二人で夕暮れの坂道を無言で歩く事になった。

先に口を開いたのは山林であった。

「アケミさん大丈夫なのですか? 倒れましたけど。天ぷらがお口に合わなかったでしょうか。」

「とんでもないわ! あんなに美味しい天ぷらは食べたことがありません。山林君、ありがとう。山林君こそ大丈夫なの?」

「大丈夫です。これくらいへっちゃらですよ。それより…アケミさん。」

「なあに?」

山林が真剣な面持ちになる。「倒れる前に歌っていた歌の事だけど…」


アケミは色々思いだし、恥ずかしさで顔面蒼白になり、逃げた。

アケミはタクシーを拾い、時速60キロで逃げたため、さすがの山林も追い付けなかった。

アケミは適当な所でタクシーを止め、降りると恥ずかしさのあまり顔を手で多いながら更に走った。

ドシン!


「いつぅ」

誰かにぶつかり、今度はアケミがいつぅとなった。芋平だった。


「アケミさん! 大丈夫ですか! お顔を隠してどうなすったんですか!」

芋平もぶつかってこけていたが、アケミを真っ先に心配していた。

「あら芋平さん! ごめんなさい。私ったら。お怪我はありませんか?」

「僕は大丈夫です。アケミさんは」

「私も平気よ。少しいつぅとなっただけだわ。それより先程は何か様子がおかしかったけれど。」

芋平がギクとなり、立ち上がり後ろを向いた。そして絞り出すようにこう言った。


「ハンケチは…アケミさんに使って欲しかったんです。」

アケミはドキンとした。

「山林青年のために用意したのではない! アケミさん、あなたのためだ!」

アケミは動揺し、また逃げようとして転倒し断念した。

「アケミさん逃げないで! 僕の事が嫌いですか!?」

「嫌いもなにも、まだ出会ったばかりでなにもわからないわ!」

アケミは叫んだ。


「出会ったばかりでも僕にはアケミさんの羊羮のような魅力がわかりますよ!」

「まあ!」

羊羮だなんて言い過ぎよ、何がわかるというの、何がわかるというの、と思いながら何度も走ったりこけたりしたアケミの術後の傷は徐々に開いていった。

「アケミさん、おなかから何か出ています」

お腹の傷から黄金の天ぷらが出てきた。


「これが私の気持ちだわ。私は天ぷらが好きなのよ。天ぷらがあればそれでいいわ。芋平さん、ごめんなさい。天ぷらと暮らすわ。」

そこへ随分走った様子の山林が現れた。

「アケミさん! 音楽室で告白してくれたよね? 僕もアケミさんの事…」


すると天ぷらがキラキラと輝き、巨大化し、手足が生え、アケミをエスコートした。

「山林や芋平より天ぷらである僕と一緒にサクサク暮らしませんか?」

アケミは「山林くんに惹かれていた理由は、どことなく漂う天ぷら、あなたのスメルのせいだったと気づいたの。私は天ぷらしか愛せないわ。共に揚がるその日まで…」

と言うと、天ぷらと手を繋ぎそのまま地平の彼方へ消えていった。

残された芋平と山林はしばし顔を見合わせ苦笑しあうと、なにくそあんなアケミなぞ。自分達も天ぷらのように魅力的な青年を目指してカラリと揚がり続けるぞと笑いながら会話し、会話し続け、気づくと二人合わせてマッシュポテトになっていて、そこには行列が出来たのであった。


おわり









実家のシャンプーがダウアーだった   2011.05.01 Sunday   00:00   -   trackbacks(0)
SUPPORT THE UNDERGUROUND
 




NFK東北震災基金




↓クリックすると大きなサイズで見れます↓





photo by MOTOYAN(NFK)




これは、ほんの数日前の気仙沼の画像だ。
みんなから集めた義援金と物資を詰め込めるだけ詰め込んで
報道されない被災地域の人たちのもとへ。

テレビの前で政府に文句を言うのも、ツイッターで拡散しまくるのも
ハイパーレスキュー隊や自衛官の皆さんや現場で被曝しながらも
踏ん張っている東電関係者に「ありがとう」と感動するのも
いま、何をすべきか? を冷静に考えたとき自分に出来ることをする。

文句はすべてが落ち着いてから言えば良い。
今は違うでしょう? 今、やるべきことがあるでしょう?


被災地の人たちの負担にならないように、運ぶだけ運んだら
長居はせずにまっすぐ帰京し、次の物資を集める。





誰かを想う気持ちを大切に考えているからこその行動力。
不良だとか、ごろつきだとか言われる人たちが
こんなにまっすぐ誰かを助けようと頑張っている。
協力せずにはいられない。


tamura


MOLE News   2011.03.21 Monday   09:50   -   trackbacks(0)
ご報告とお願い
11日に発生した『東北地方太平洋沖地震』では、多くの方々が被害にあわれ被災されたこと、また想像もつかないほど多くの方々の命が犠牲にあわれたことにつきまして、心よりお悔やみし、またお見舞い申し上げます。

12日に配布を予定していたMOLEですが、東北地方の配布協力店舗様も多く被災されたこともあり、しばらくの間、都内各所も含め配布は自粛することとさせて頂きます。



多くの友人や知人、またそのご家族の方々が被災し、また個人事ではありますが私の地元・北海道でも被害がありました。我々MOLEを制作しているUGMメンバーもかつて北海道東方沖地震や阪神淡路大震災を経験しています。大地や自然に対しいかに人間が無力であるか、ことあるごとに思い知らされます。

今回の震災で私の所にも様々な心配、安否確認のメールとともに、ソースが不明なチェーンメールが多数届いています。


本当に大切なことは、刻一刻と変わる状況や被害をしっかりと確認し、自分がするべきこと出来ることを行動に移すことだと思います。

支援物資を個人で送ったり、誰かに便乗して使用使途を確認せず義援金を送るのではなく、自分がどういう風に支援したいのかをしっかりと考えてもらいたいと思います。

赤ちゃんを抱えたお母さんの為に…と思うのならオムツメーカーや粉ミルクメーカーに問い合わせするのも良いでしょうし、防寒対策に役立ててほしいと思うのならカイロメーカーになど、自分の思いがちゃんと届くように、また届けてもらえるように行動していくべきだと思っています。


13日の9時の時点で69の国と地域、また5つの国際機関から支援の申し入れがあったそうです。

先日被災し未だ救助活動が続いているニュージーランドや、自国が大変なアフガニスタン、100年前の恩義をいつまでも感じてくれているトルコ、力強く支援を表明し空母艦隊の派遣を決定したアメリカ。それ以外にもたくさんの国や個人の方々が日本に深い同情と応援をしてくれています。

無事であった日本人が被災された方々の為に出来ることを、小さな規模でも行動に移すべきだと思います。東北のお米を買うということからでも良いと思います。


支援にあたる米軍の救援活動作戦名は『Operation Tomodachi』だと聞きました。


被害にあわれた皆様の一日も早い復興と安寧の日々を祈り、微力ではありますが私も支援を続けていきたいと思います。



MOLE Magazine 田村巴

MOLE News   2011.03.13 Sunday   17:58   -   trackbacks(0)
おまたせしております
久々の更新です。

お待たせしておりますMOLE vol,07(もう3月だけど)新年一発目がまもなく完成いたします。
紆余曲折、試行錯誤。

都内は今週末に配布を開始します。

なお地方の各ご協力店舗さまでの配布は来週中には開始出来るようにしたいと思います。




さて。


今号の表紙ですが。
これを発表しないことには、探してもらえないっていうのもあるのですが
実際、本に出会うまで知らないでいて欲しいっていう思いもありつつ…

でも、本当に今までとは全く違う表紙なので
ボーッとしてたら見付けられない可能性も…


ということで。
ネタバレしたくない方はココから下は見ないことをお勧め致します。




















実はMOLEの文字が一切、表紙には載っていないので
見付けられるか不安な方のためにここで表紙デザインの発表をしておきます。
























どうですか? こんな表紙になりました。
これが今年一発目の表紙です。



天狗ワークスの若狭さんを迎えて、一年間まったく新しいカタチで表紙の制作をしていきます。その第一弾がこちら。





その他、色々と本自体の仕様も変わっていますので、ぜひ詳細は手に取ってご確認して頂ければと思います。



ではでは。
配本まであと少し。

なんとなくで良いので楽しみにしておいて頂ければと思います。




tamura
MOLE News   2011.03.09 Wednesday   01:15   -   trackbacks(0)
MOLE vol.06とモールくん














ちょっと遅くなっちゃいましたけど、MOLE vol.06が無事に完成しました。
今回から配布場所に地方が少しずつ増えてきました。


これにて【MOLE Magazine プロジェクト】の第一章が完結ということで。

来年からは年間4冊の発行となりますが、その分かなりのイメージチェンジをはかります。


手にした人が2回くらいは、楽しめるような仕掛けが出来たらと思い
現在、着々と準備を進めていますので楽しみにしていて下さい。


なお。

MOLE Magazineにマスコットが出来ました!
それが下の【MR.MOLE(モールくん)】です。


かわいいでしょ?
モールくんともども、これからも宜しくお願いします。









MOLE News   2010.12.01 Wednesday   23:02   -   trackbacks(0)
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