とんとんとん…とんとんとん
太鼓橋からは今日も音が流れてくる。
家でこんにゃくをむしゃりと食べていると、郵便受けにガタリという音がした。
投函した人物が去る頃を見計らい中身を取りにいくと、チラシであった。
近所のまるおかスーパーでももひきが安いとのこと。
最近は寒いのでももひきを調達せねばと思っていたから丁度良いので向かう事とした。
とんとんとんとん音の鳴る太鼓橋を渡りながらまるおかスーパーのある「へそ町」へ向かうと、【この橋で飲食するべからず】と看板が立てかけられていたため、中心に寄ってこんにゃくを食べると、真っ赤な顔をしたじいさんが走ってきて、あらゆる限りの罵詈雑言を私に浴びせると、こんにゃくを奪い去っていった。
通常ももひき−こんにゃく<割引ももひき
と考えたので、どうにも損をしたような気分になったため、まるおかスーパーに行くのをやめ、太鼓橋の上で鎮座する事にし、夕暮れにぴかぴかと光る川の水面を眺めていると、一人の女が近づいてくる。
「貴方陶芸に興味はないでしょうか。貴方陶芸に興味がありそうねぇ」
そういって近づいてくるので、別段興味津々というわけではないですよ。と告げると
「私もです」
と言って隣に座った。
とんとんとん ポーン
太鼓橋の鳴りが良くなっている。
「陶芸の話はきっかけにすぎなく、本当は貴方に興味があったのです」
ほう、寒いのにももひきを履いていないからかな、と思うと彼女は
「さっきこんにゃくを食べて怒号を浴びていましたよねぇ。あれは面白かったですよ。頭が悪いように思えましたからね。」
と言ってプーと笑い出した。
太鼓が寂しげにポンポンと鳴っている。
つまりバカにしに来たのですか、というと、そうですよ。動画をまわしておいて動画サイトにアップして世界の笑いものにすればよかったです。と答えながら立ち上がると、座っていた所に小さいパンダが落ちていた。
私はつい笑ってしまった。
すると彼女は「何よ! 座ると小さいパンダがついてしまう私のような人間だから、よりバカな人をバカにしたくなるのはそんなにいけない事かしら!? どうせ座るとパンダがついてしまうからバカにしているでしょう!」と泣き叫び、去っていった。
ポンポンポン… とんとんとん…
太鼓の音が夕日に溶けていく。
ももひきはまた、次回買う事にしよう。
おわり