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『悪徳さな子』
さな子は緑色の手垢が出るので、それで偽のマリモを作って売っている。
水に浮かぶので本物と遜色ない。手で形を作っているので丸以外にも様々な形が出来る。
この偽マリモは世話いらずなので子供からお年寄りまで飛ぶように売れている。さな子はこれを「阿寒湖の良いマリモ」というホームページで販売している。
さな子の手垢が緑色である事は、昔通っていた小学校では有名だった。
さな子は当時悩んでいた。みんなさな子に近寄るなかれといった空気を出した。
さな子はならば近寄ってやるものかと授業中にフライハイした。
一階だったので花壇にガタメシと着地した。あだ名が「飛田みどり」になった。
さな子はとても内向的になってしまい、恋人もあまり出来なかった。
22の時そんな内気なさな子に興味を持った内気な男性にお付き合いを申し込まれた。
しかし初めて出来た恋人も、手を繋げない、手を見せられないという理由からうまくいかず、別れた。
さな子は一人で生きていくしかない、と思い、自立の為に、手垢をマリモにしようと考え付いたわけだ。
実際この商売は大ヒットした。
「うさぎの形の阿寒湖のマリモ・うさまりん」や、「くまの形の阿寒湖のマリモ・くまりん」のようなキャッチコピーも巷で流行、女子高生などは、「うさまりん超かわいい〜」「うちいぬまりんだし。水代えなくても死なないし。超つえーし。パネェし。」みたいなノリで大フィーバーだ。
さな子は金を手にして手垢の手術を受け、治した。
するとマリモを作れなくなった事に気付いた。
そしてマリモもさな子の偽造とバレて吊しあげられた。
でもさな子は思った。「いい感じで自分は時の人だ」と。
騒ぎも終わり、金も無くなった。仕事をしようにも、面接官に「この人手垢事件の人だ」と思われ、落とされた。さな子は日銭に困り、焦った。
さな子はアパートの金も払えなくなり、実家に電話をするも相手にされず、仕方ないので阿寒湖のマリモを食べて湖畔で過した。
寒かった。
とても寒かった。
しかし、一年程経つと寒くない事に気付いた。
さな子の体が緑色のフサフサに覆われ、マリモ化していたのだ。
さな子は思った。「マリモはもう食べ飽きた」さな子はマリモなまま町へ出た。みんなはうわぁと逃げていった。
また時の人になった。時の人なのでTVショウに出演し、食うには困らず、よくビフテキを食べた。
マリモを食べなくなったので普通のさな子になった。
またさな子はみんなに忘れられた。
さな子はもうなんか色々と面倒臭くなり、パンツ丸見え状態で歩いていた。
そこでおっさんが現われて、「あんたマリモのさな子だろ?ツンパの下もマリモかい?」と言った。
さな子は「そうねぇ、そうかもしれないわねぇ。でももう、どうでもいいわ」と言って去ろうとした。
おっさんは「まぁ待てよ。酒奢ってやるから話そうじゃねぇか」と言った。
さな子はする事も無かったのでついて行った。
おっさんがスカートをちゃんとしてくれて、さな子のパンツは隠れた。
居酒屋「もんごめり」についた。
さな子は「尻隠して頭隠さずね。はははっ」と自嘲気味に笑った。おっさんはシカトで酒をかっくらっている。
さな子も暇なので酒を飲んだ。そして聞いた。
「おじさん、何で私を誘ったの?」おっさんは「ん〜?一人で飲むのもつまんねぇだろ」と言った。
さな子は「まぁそうね。」と言ってお通しのゴボウの煮付けを口にした。
「ばぶ!」
さな子ははぜた。
パアンとはぜたのだ。
おっさんは「あーあ、わけぇのにはぜちまったよ…」といってさな子を広い集め、元のさな子に戻した。
「あたしったらダメね。初対面ではぜるなんて…」と言ってグラスに口をつけた。
もんごめりのマスターは「気にする事ないですよ。ストレス社会ですから」とニッコリ笑った。
おっさんもガハハと笑った。
さな子は言った。「明日が見えない」
「見る必要ねぇよ。今だろ?明日じゃねぇだろ?」と陽気に言う。
さな子は「でもね実際明日なのよ…私には、明日の事が不安なの」と言いながら泣いた。
おっさんは「わけぇ時はそうさ。気にすんねぃ。飲め飲め」と言った。さな子は言われるがまま飲んだ。
何やら色々話した気がするが、あまり覚えていない。
夜も更けてきて、二人は店を出た。
「じゃ、おりゃあいつも夜は「もんごめり」で飲んでっから。暇ならまた来いや」とおっさんは言うと、千鳥足で駅へ向かって行った。
さな子はお礼を言って家に向かった。二度目のブレイク時に借りた狭いアパートへ向かう途中、マーケットで「くわい」を買った。
アパートの戸を開けると急に眠気が襲ってきて、玄関で靴も脱がずに眠ってしまった。
昼位に電話で目が冷めた。
「もしもし」相手も「もしもし」と言う。若い男の声だ。さな子は「もしもし」と言うわけのわからぬ言葉を二回言う事にウケてしまった。
相手はかまわず続けた。「俺俺、俺だけど。」俺俺詐欺だった。
さな子は明日が見えないのは自分だけじゃない、と実感した。
「じゃあ暇があれば振り込んでおくわね。」と適当な事を言い電話を切ると、買っておいたくわいを食べた。
少し苦い。
玄関で寝たので体が痛い。二日酔いで頭も痛い。
さな子はとりあえず風呂に入ると、またウトウトとしてきたので、風呂を出て布団を敷いた。テーブルの上のミカンを一口頬張って、そのまま夜まで眠った。
目覚めると同時にさな子の脳裏に、「新しい事をしなければ」という思いが浮かんだ。
さな子はバケツを頭に被り、体中にアロンアルファでマルチビタミンのサプリメントを貼り付けて、夜の町に出た。
「もんごめり」に行こうと思ったが、今は前衛な自分を大事にしなくては、と思い、路上パフォーマンスをした。
右手、右手、左手の順で天高く伸し、体中で突き抜ける思いを表現した。通報された。
怒られたので「もんごめり」に行った。
さな子がバケツをかぶっていたので、おっさんはすっとんきょうな顔をしていた。
さな子が「私よ。昨日のさな子です」と言うとおっさんは、
「あ〜!なんだその格好。マリモよりおかしな格好じゃねぇか。バケツかぶってたら飲めねぇだろ。脱げ脱げ!」と言って笑っていた。
さな子はバケツを脱ぐと、酒を飲んだ。マスターは「はい、今日のお通しははぜませんから」と言って、からしレンコンを出した。すごくうまい。
さな子は正直どうすればいいのかわからなかった。全く何もかもがわからなかった。
おっさんに「私わからないの」と言うと、
「わかる奴なんていねぇよ。お釈迦さんじゃああるめぇし!なんとかなるよ、安心せぇ!」と言いさな子の肩をバンとおもいきり叩いた。
さな子は思った。確かに何とかなってきた。きっと何とかなる、と。
そう。何とかなる。なるようになる。ケセラセラ。さな子は開眼し、またフライハイした。
一階だったので、道路にゴッ!ベタッとなった。
もんごめりの人達は楽しそうに笑っていた。誰もさな子に変なあだ名はつけなかった。
さな子も気付くと笑っていた。
家に帰ると、ケセラセラのレコードをかけた。
耳を傾けるうちにまた眠っていた。
何だか楽しい夢を見た。
おわり
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